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私たちは国語の授業で何を学んだのだろうか

私が国語の授業で何を学んできたのかを知るために、『外国語で発想するための日本語レッスン』という本の内容と、国語の学習指導要綱をまとめる記事です。

はじめに

先日、下記の本を読みました。

外国語で発想するための日本語レッスン

外国語で発想するための日本語レッスン

この本の内容は後述するとして、著者の友人(ドイツ人)が話したという言葉が非常に印象的に書かれていました。

だったら日本人は、国語の授業で一二年間もいったい何を学んでいるの?

また先月、下記の「子どもたちは本当に文章を理解できているのか?」と警鐘を鳴らす記事が話題になっていました。

さらに先日、下記のように読解力の重要性を指摘する記事も話題になりました。

私はこの記事を読んで、「国語の基礎的な勉強をやり直すとは具体的に何をすることだろうか?」という疑問を持ちました。

そして『外国語で発想するための日本語レッスン』に書かれていた言葉の通り、そもそも国語の授業で何を学んできたのかが気になりました。ただし昔受けた授業内容は忘れてしまったので、いくつか資料を読んで調べてみました。

※軽く調べた程度なので不十分な内容となっています。後日追記するか、別の記事を書くかもしれません。

国語の授業で何を学んだのか

欧米と日本の国語教育の違い

『外国語で発想するための日本語レッスン』は「テクストの分析と解釈・批判」(クリティカル・リーディング)について書かれた本です。 クリティカル・リーディングとは何かについてはこの本を読んでいただくとして、ここではこの本に書かれている欧米と日本の国語教育についてまとめます。

この本によると、欧米の母国語教育は下記のようなものらしいです。

1 幼稚園     読み聞かせと分析的問いかけ
2 一年生~四年生 再話(物語を読み聞かせ、自分の言葉で再構成する作業)
3 五年生~八年生 要約(物語の構造の指導)
4 九年生~    テクストの分析と解釈・批判
 
 右のように、最終目的である「テクストの分析と解釈・批判」に向けて、幼児の頃から読書に必要な知識と技能を積み上げられるように、読書技術を習得するためのシステムがしっかりと構成されています。幼児期には、絵本を読み聞かせながら、分析的な問いかけを保護者や幼稚園教諭が行い、子どもは無邪気にそれらに答えることによって、自然に本の読み方を学ぶことになります。小学校段階(一~四年生)では、教師がグリム童話などの物語を読み聞かせ、児童はそれを自分の言葉で文章に再生します。この時、物語に必要な要素である、5W(いつ・どこ・だれ・なに・なぜ)と事件発生の因果関係をきちんと聞き取れないと再生はできません。従って、児童は集中して聞き取ることを通して、物語の構成や展開を自然に学ぶことになります。五~八年生(中学ニ年生)の段階では、要約の技術が指導されます。それは、数ページの短い物語から開始され、最終的には一冊の本の要約にまで至ります。物語がどのような構造になっているのか、物語が理論的に展開するためにどのポイントを押さえなければならないのかという点を学ぶことが、その先の「テクストの分析と解釈・批判」に繋がっていくのです。

一方で日本の国語教育(特に読書教育)については下記のように書かれています。

 日本の読書教育は、欧米のものと比較すると相当に特異です。小学校から高校までの間に系統的な読書技術のための指導システムがなく、日本では質の高い文学作品を数多く読書すれば自然に読めるようになり、作文が書けるようになるものと信じられているからです。ところで、単にたくさん読書をすれば、読書技術は身につくものなのでしょうか。
(中略)
本が好きな人は、読書をしない人に比べてもちろん本を読み慣れてはいるでしょう。しかし本を読みなれていることと読書技術を心得ていることは同じではないのです。

そしてさらに、国語の試験の特異性が指摘されています。これはネットでもたびたび話題に上がる「作者の気持ちを考えろ」問題ですね。

 日本における読書教育で、独特なのが国語の試験問題です。国語の試験で生徒に対し課題を与えて作文を書かせることは滅多にありません。その代わりに試験問題では、答えを選択するか、文章の中からあらかじめ決められた答えを見つけ出して書くのが一般的です。正解は必ず一つで、教師(あるいは問題作成者)の考えた正解以外の答えは認められません。また、教師がなぜそのような正解を導き出したのかについて、論理的な説明がなされることも一般的ではありません。
(中略)
このように、生徒の読解力を試す試験のほとんどが選択式や穴埋め式である点、正答が一つで、複数の答えが認められない点、正答と決められたものが、本当に正答かどうかが曖昧な点などが、日本の国語の読書教育に見られる特異性です。

著者はこのような特異性について、「日本の読書教育は、道徳の授業内容と似通っている」と指摘しています。

この本ではその後に具体的な授業内容が紹介され、「絵の分析」と「本の読み方」を利用した「テクストの分析と解釈・批判」のレッスンが展開されていきます。 とてもためになる内容なので、特にブログを書いているような方は読むべきだと思います。 冒頭に書いた「国語の基礎的な勉強をやり直すとは具体的に何をすることだろうか?」については、とりあえずこの『外国語で発想するための日本語レッスン』と、同じ著者の『外国語を身につけるための日本語レッスン』を読めばいいんじゃないかと思います。

外国語を身につけるための日本語レッスン

外国語を身につけるための日本語レッスン

話を戻して、この本を素直に読んだ私の感想は、「国語の授業では何と無駄なことをしていたんだ! 欧米の母国語教育は非常に論理的で、こんな授業であれば国語が好きになっていたに違いない! 日本の国語教育は即刻改めるべきだ!」といった感じです。

特に絵や文章を様々な観点から分析していく流れは、証拠を集め考察によって真実に近づいていく推理小説のような魅力がありました。作者の気持ちを考えるような国語は非常に文系的なのに対し、書かれている根拠に基づいた分析を行う国語は非常に理系的に感じます。 そして「お前が受けた十二年間の国語教育は無駄だったんだ!」と突き付けられているようで、読み進めるのがつらい本でした。

しかし、本当に国語教育は無駄だったのでしょうか?

そもそも私は昔受けた授業内容をほとんど覚えていないので判断できません。 「作者の気持ちを考えろ」問題についても、印象的だから覚えているだけで、他にも様々なことを学んだはずです。 そして、教育というのは国家にとって最も重要なことであるはずで、無駄なことをずっと続けてるとは思えません。 また教育内容も変わっていくものなので、私が受けた国語教育と、今の学生が受けている国語教育は別物になっているかもしれません。

国語の学習指導要綱

授業内容をほとんど覚えていない上に教科書も処分してしまったので、私自身が受けた国語の教育に関する手掛かりは手元にはありません。

そこでとりあえず簡単に確認できる学習指導要綱を見てみます。 学習指導要綱とは下記のようなもので、およそ10年で改訂されるそうです。

全国のどの地域で教育を受けても、一定の水準の教育を受けられるようにするため、文部科学省では、学校教育法等に基づき、各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準を定めています。これを「学習指導要領」といいます。
学習指導要領とは何か?:文部科学省

現在の小中学校の国語の学習指導要綱は下記ページで確認できます。

内容が多いので、ここでは小学校学習指導要綱のうち、「身につけることが目標とされている能力」と「指導内容の例」を抜粋してみます。より詳しく知りたい方は上記ページを参照ください。

  • 第1学年及び第2学年
    • 目標
      • 相手に応じ、身近なことなどについて、事柄の順序を考えながら話す能力。大事なことを落とさないように聞く能力。話題に沿って話し合う能力。
      • 経験したことや想像したことなどについて、順序を整理し、簡単な構成を考えて文や文章を書く能力。
      • 書かれている事柄の順序や場面の様子などに気付いたり、想像を広げたりしながら読む能力。
    • 例1(話すこと・聞くこと)
      • 事物の説明や経験の報告をしたり、それらを聞いて感想を述べたりすること。
      • 尋ねたり応答したり、グループで話し合って考えを一つにまとめたりすること。
      • 場面に合わせてあいさつをしたり、必要なことについて身近な人と連絡をし合ったりすること。
      • 知らせたいことなどについて身近な人に紹介したり、それを聞いたりすること。
    • 例2(書くこと)
      • 想像したことなどを文章に書くこと。
      • 経験したことを報告する文章や観察したことを記録する文章などを書くこと。
      • 身近な事物を簡単に説明する文章などを書くこと。
      • 紹介したいことをメモにまとめたり、文章に書いたりすること。
      • 伝えたいことを簡単な手紙に書くこと。
    • 例3(読むこと)
      • 本や文章を楽しんだり、想像を広げたりしながら読むこと。
      • 物語の読み聞かせを聞いたり、物語を演じたりすること。
      • 事物の仕組みなどについて説明した本や文章を読むこと。
      • 物語や、科学的なことについて書いた本や文章を読んで、感想を書くこと。
      • 読んだ本について、好きなところを紹介すること。
  • 第3学年及び第4学年
    • 目標
      • 相手や目的に応じ、調べたことなどについて、筋道を立てて話す能力。話の中心に気を付けて聞く能力。進行に沿って話し合う能力。
      • 相手や目的に応じ、調べたことなどが伝わるように、段落相互の関係などに注意して文章を書く能力。
      • 目的に応じ、内容の中心をとらえたり段落相互の関係を考えたりしながら読む能力。
    • 例1(話すこと・聞くこと)
      • 出来事の説明や調査の報告をしたり、それらを聞いて意見を述べたりすること。
      • 学級全体で話し合って考えをまとめたり、意見を述べ合ったりすること。
      • 図表や絵、写真などから読み取ったことを基に話したり、聞いたりすること。
    • 例2(書くこと)
      • 身近なこと、想像したことなどを基に、詩をつくったり、物語を書いたりすること。
      • 疑問に思ったことを調べて、報告する文章を書いたり、学級新聞などに表したりすること。
      • 収集した資料を効果的に使い、説明する文章などを書くこと。
      • 目的に合わせて依頼状、案内状、礼状などの手紙を書くこと。
    • 例3(読むこと)
      • 物語や詩を読み、感想を述べ合うこと。
      • 記録や報告の文章、図鑑や事典などを読んで利用すること。
      • 記録や報告の文章を読んでまとめたものを読み合うこと。
      • 紹介したい本を取り上げて説明すること。
      • 必要な情報を得るために、読んだ内容に関連した他の本や文章などを読むこと。
  • 第5学年及び第6学年
    • 目標
      • 目的や意図に応じ、考えたことや伝えたいことなどについて、的確に話す能力。相手の意図をつかみながら聞く能力。計画的に話し合う能力。
      • 目的や意図に応じ、考えたことなどを文章全体の構成の効果を考えて文章に書く能力。
      • 目的に応じ、内容や要旨をとらえながら読む能力。
    • 例1(話すこと・聞くこと)
      • 資料を提示しながら説明や報告をしたり、それらを聞いて助言や提案をしたりすること。
      • 調べたことやまとめたことについて、討論などをすること。
      • 事物や人物を推薦したり、それを聞いたりすること。
    • 例2(書くこと)
      • 経験したこと、想像したことなどを基に、詩や短歌、俳句をつくったり、物語や随筆などを書いたりすること。
      • 自分の課題について調べ、意見を記述した文章や活動を報告した文章などを書いたり編集したりすること。
      • 事物のよさを多くの人に伝えるための文章を書くこと。
    • 例3(読むこと)
      • 伝記を読み、自分の生き方について考えること。
      • 自分の課題を解決するために、意見を述べた文章や解説の文章などを利用すること。
      • 編集の仕方や記事の書き方に注意して新聞を読むこと。
      • 本を読んで推薦の文章を書くこと。

小学生の期間だけでも、多岐にわたる内容が盛り込まれています。当然ながら、読書技術だけでなく、話す・聞く・書く技術についても学んでいたようです。

内容についても、確かに小学生のうちにこれらの能力を身につけるべきであり、妥当なように思います(教育に関する素人の意見ですけれど)。 これだけを見れば、「日本の国語教育は即刻改めるべきだ!」とはなりません。

もちろん、この学習指導要綱は基準であり、実際のカリキュラムは別物になります。現場の授業内容はこれとはかけ離れたものなのかもしれません。

おわりに

私が国語の授業で何を学んできたのかについては、まだ謎のままです。 本当にしっかり調べようとするならば、教師の皆様にインタビューしたり、数多くの資料を読み込んだりする必要があるでしょう。

まあでも、正直そこまでする問題意識は私にはありません。