kengo700のダイアリー

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ゲームの公式有志翻訳について

ゲームの開発者側が有志の翻訳を募集する「公式有志翻訳」について、知っていることを簡単にまとめる記事です。

はじめに

主にインディーゲームの分野では、外国のゲームをファンが勝手に翻訳してプレイ&布教する、いわゆる「有志翻訳」という文化があります。

さらに最近では、開発者側が有志の翻訳を募集するケースも増えてきているように思います(例えば下記のようなゲーム)。

この様な「公式有志翻訳」について、私が知っている情報をまとめてみようと思います。

※私はゲームの開発者でも翻訳者でもない、いちゲーマーです。間違った情報を書いているかもしれません。その場合はご指摘いただけると助かります

公式有志翻訳の方式

一口で「公式有志翻訳」と言っても、その方式は多岐にわたります。 ざっくり分類すると、公式有志翻訳は下記の3つに大別できるかと思います。

  • Web上で翻訳する方式
    • 開発者「Web上で複数人が翻訳できるシステムを使うよ! しばらくしたらゲームに実装するよ!」
  • MODとして実装する方式
    • 開発者「ゲームを翻訳する方法を解説するよ! 各自でMODを作ってね!」
  • クローズドに翻訳する方式
    • 開発者「有志翻訳者を募集するよ! 方法についてはメールでやり取りするから連絡してね!」

もう少し整理すると、こんな感じでしょうか。

  • 翻訳する場所
    • Web上
      • 独自の翻訳システム
      • 既成の翻訳システム(「Crowdin」など)
    • ローカル
  • ゲームへの実装の方法
    • 開発者がゲームに実装
    • 翻訳者がゲームに実装(MODなど)
  • 参加する方法
    • 翻訳システムに登録
    • 開発者に連絡

ここら辺は、次項の具体例を見てもらった方が理解しやすいかもしれません。

具体例

Dead Cells

2Dアクションゲーム「Dead Cells」の公式有志翻訳は、翻訳者がMODを作成する方式です。 2017年6月1日のアップデートでローカライズMODの作成方法が実装され、6月8日に詳細がアナウンスされました。

このゲームはインストール先の「main-en.pot」というファイルにテキストデータがまとまっています。

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これを「Poedit」というフリーソフトで開いて翻訳し、コマンドラインから所定の操作をすると、ローカライズMODの作成とSteamワークショップへのアップロードを行うことができます。

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このような方式なので、基本的に翻訳者は自分のパソコンで一人で翻訳を行うことになります。

ただし「Dead Cells」の場合は、日本語化MODの作成者(私)がテキストをGoogle スプレッドシートにまとめているので、誰でも翻訳作業に参加できるようになっています。

「Oxygen Not Included」というゲームでも、似たような方式で公式有志翻訳が行われているようです。

ARK: Survival Evolved

オープンワールドアクションゲーム「ARK: Survival Evolved」では、「Crowdin」というWebサービスを利用して有志翻訳を行っています。

Crowdinについて先日まで知らなかったので詳しくは説明できませんが、ブラウザからアクセスしてアカウントを登録し、訳文を書き込んでいくようです。これにより、複数人で同時に翻訳作業を進めることができます。

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Crowdinの下記ページを見ると、他にも「Minecraft」や「Factorio」などのゲームの翻訳プロジェクトが、Crowdin上で進められているようです。

Avorion

スペースサンドボックスゲーム「Avorion」は、有志が作成した非公式日本語化MODが以前から公開されていますが、2017年6月13日に公式が有志翻訳の募集を開始しました。

Avorionでは独自の翻訳システムを利用してWeb上で翻訳を行っています。Crowdinはゲーム開発者にそれなりの利用料負担がかかるので、だったら自分で作ってしまえ、という感じでしょうか。

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同様に「Galactic Junk League」というゲームでも、独自の翻訳システムを利用して、複数人でWeb上で翻訳作業を行うことができるようになっています。

メリットとデメリット

開発者にとって

開発者側が有志翻訳を募集するメリットは、ローカライズ費用を抑えつつ、より多くの国のゲーマーにゲームを販売できることだと思います。 特にインディーゲームでは予算が少ない上に、ベータ版を配信して資金を回収しつつ開発を進める方法がとられることも多くなっています。 その場合はバージョンアップ毎に翻訳が必要になるため、翻訳業者に頼むのは現実的ではありません。

デメリットとしては、翻訳の質が担保されないこと、納期が予想できないこと、そもそも翻訳者が集まらない可能性があること、などが考えられるでしょうか。 場合によっては悪意のある人が参加し、出鱈目なテキストを実装してしまうリスクもあるかもしれません。

有志翻訳者にとって

有志翻訳者にとっては、日本語化が劇的に簡単になるというメリットがあります。 ゲームに日本語フォントが含まれてることはとても稀なので、翻訳作業をする前に、ゲームに日本語の文字を表示させる必要があります。 この作業は翻訳作業に匹敵するくらい大変だったりします。 公式が有志翻訳を募集してくれれば、フォントの実装は開発者にお願いすればいいだけなので、翻訳者は翻訳だけに集中できます。

また有志翻訳というのは割とイリーガルな活動なので、公式のお墨付きがもらえれば活動しやすくなります。

デメリットは殆どありませんが、翻訳の実装を開発者側が行う方式の場合、ゲーム内での表示を確認しにくくなることはあります。

ゲーマーにとって

何と言っても、従来では日本語化されなかったゲームを日本語で遊ぶことができるようになる可能性が高まります。 特にインディーゲームは最初から日本語化してくれることは殆どないので、有志翻訳が広まればそれだけ日本語で遊べるゲームも増えることでしょう。

デメリットとしては、プロが翻訳したものよりも翻訳の質が落ちる可能性が高いことです。もちろん有志翻訳に人がたくさん集まればプロを超えるような翻訳を実現できる場合もありますが、逆に人が集まらない場合は翻訳の質はどうしても低くなります。

リンク

おわりに

どの有志翻訳プロジェクトでも、基本的に参加者は不足しています。

いったん翻訳したものを自然な日本語に修正する作業も必要なので、英語ができない人でも歓迎されると思います(もちろん荒らしや故意に迷惑をかける行為は厳禁ですが…)。

「参加してみたいけど方法がよく分からない!」という場合は、できる範囲で調べてブログ記事にまとめようと思うので、お気軽に教えてください。